極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
迫りくる再会に戦闘準備を整えよ
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ピピピピピ。


けたたましいスマホのアラーム音に目を開けた。
音量は最大、一番自分が耳障りだと思える音に設定してあるのだが、蓄積した疲れのためか頭はいつまでもすっきりしなくて、しばらくそのまま天井をぼんやりと眺めていた。


いや、疲れだけが理由でもない。
久しぶりに嫌な夢を見たからだ。


別れた当初はそれこそ何度も見た夢だけれど、このところはもうすっかり忘れて、悩まされることもなかったのに。


寝起きからの苦い感情を噛み潰しながら、のろのろと寝返りをうちベッドサイドのテーブルの上で鳴り続けるスマホに手を伸ばす。
アラームを止め、勢いをつけてようやく上半身を起き上がらせたその時、頬を濡れた感触が伝うことに気が付いた。


「……未だに泣けるとか。びっくり」


つい無意識に、首輪のようにいつもぶらさがったままのネックレスに指で触れた。
リアルな夢に、あの頃の感情に心まで巻き戻されていたらしい。


かといって、いつまでも巻き戻されたままでもない。


「あっ! やばい、今日朝一に東武に行かなきゃだった!」


スマホのアラームがいつもより三十分早く設定されていたことで、今日の仕事を思い出す。


きゅるきゅるゅる、と気持ちはすぐさま現実まで早送り。
慌ててベッドから飛び降りた。


今日は東武百貨店に入っている店舗を一番に、周辺店舗に顔出し。
催事の企画を店長に相談されているから、それは一旦持ち帰って、それから。


四月に入ったばかりだが、夏用ギフトの準備も着々と進んでいる。
それを各店舗に通達して、それから。


洗面所で顔を洗いながら一日の段取りを頭で流して、準備を追える頃には夢の余韻は覚めた。


吉住真帆《よしずみまほ》二十七歳。
恋に破れて以降、忙殺されて枯れ気味である。


鏡に映る少々くたびれた顔が、それを物語っている。
薄茶の髪に随分前にかけたウェーブも、すっかりゆるゆるになっていた。

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