極上スイートオフィス 御曹司の独占愛
強さと可愛げは両立するか
挫いた足は、一晩経てば少し和らいだもののやっぱり歩く時には痛みが伴った。

ちょうど、暫くは店舗周りも必要ない頃だったし、今週中くらいは問題ない。
来週にはGWのイベントなどで外出が増えるが、その頃にはさすがに治っているだろう。


念のため、暫くはパンプスを止めてスニーカーで、出来るだけ内勤中心に動くことにした。
しかしそれならそれで、実は結構、イライラッとする事態があったりする。


「佐々木さん、経理から連絡があったんですけど、お願いした領収書ちゃんと回してくれました?」


エリアマネージャーのサブの仕事をする女性社員は八人だ。
その中の一人、佐々木さんというメンバーの中心的な存在である人に声をかけた。


マネージャーの人数に対して半分以下なので、色々と負担が多いのはわかっている。
だが、どういうわけか彼女は私がお願いした仕事だけをいつもきっちり忘れてくれる。


「まだですけど? 私も忙しいんで」

「まだって。先週ですよ?」


悪びれもせず、ちらっと私の顔を見ただけですぐに視線をパソコンのディスプレイに戻す。
その様子にイライラッと来たのをむりやり口角を上げ笑顔を作った。


イラつきはするけど、実は慣れてる。


彼女の嫌がらせは、朝比奈さんがまだここでエリアマネージャーをしていた頃からだ。
もう一つ言うなら、店舗数が多すぎて書類整理や雑務も半端じゃない朝比奈さんに特例で専属のサブが付くことになり、それに私が選ばれた時から。


つまり、やっかみだ。


「はーい。すぐやりまーす」

「結構です。自分でやった方が早いです」


謝る気もない様子に、どうしても言い返し方がきつくなる。
だが実際、自分でやった方が確実だし早い、揉めずにもすむから、私は普段は雑務の殆どは自分でこなすようにしていた。


たまたま、先週はどうしても手が回らなくてお願いしたのだが、やっぱり無駄だったようだ。
溜息をついて佐々木さんに近づくと、彼女もむすっとした顔で引き出しから私が頼んだ領収書を引っ張り出す。


そこでどういうわけか、突然ころっと表情を変えてしおらしい態度を見せ始めた。


< 75 / 237 >

この作品をシェア

pagetop