いじっぱりなオトコマエ女子と腹黒なイケメン御曹司の攻防
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目を引く煌びやかさはないけれど、老舗の重厚さと落ち着きのある清潔さが入り口をくぐる人々の背筋を知らぬうちに伸ばさせる。それが日本でも一、二を争うホテル、ランドホテルだ。

ハイブランドホテルらしく、その格式と同じく料金もお高くて、私はランチブュッフェに一度来た事しかない。

数年前の記憶を思い出しながら、きらめきよりも暖かさをより感じさせるシャンデリアを見上げてあえて独り言を呟く。

「だから、緊張しちゃうのも仕方ない」

どうにも落ち着かない気持ちを口にすることでどうにかしようとしたのだけれど、成功したとは言い難い。
それは私には縁遠い高級ホテルのせいなのか、それともこれから会う相手のせいか。
平常心を持つことは諦めて、その相手を探す。

「あっ‥‥」

ロビーの片隅、ソファに座って難しい顔でモバイルパソコンを覗く姿は王子様じゃなくて、出来るビジネスマンだ。
無造作に足を組んだ姿さえも気品を感じさせるのは昔と変わらないけれど、優美な甘さより凛とした厳しさが漂うオーラは時の流れを表していた。

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