神様の隣で、君が笑った。
 

呆気にとられた私はただ呆然としたまま、音楽室を出ていこうとする彼の背中を見ていることしかできなくて……。


「……ばーか」


音楽室を出る間際、振り向きざまにそんなことを言った彼に驚き、目を見開いた。

静まり返った、放課後の第三音楽室。

通い慣れたはずのその場所が、いつもと違った別の世界に変わった気がするのは、どうしてだろう。

……本当に、なんなの。

胸の奥がざわめいて、落ち着かない。

すっかりと濃紺に染まった夏の空。

筆跡の違う一問が、乱暴に私の心を掻き乱していた。


 
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