神様の隣で、君が笑った。
 




「なーの、ちゃん!」


賑やかな放課後の渡り廊下。

すれ違う人たちはそれぞれに、目的の場所に向かって駆けていく。

まるで置き忘れられた傘のようにその光景を眺めていた私は、第三音楽室へ行こうと思い立った矢先に名を呼ばれた。


「あ、やっぱり、なのちゃんだ! おーい!」


振り向くと、十数メートル先でリュージくんが大きく手を振っている。

長い廊下に凛と通る声。

リュージくんは、まるで真夏の太陽だ。

ジメジメした気持ちを一瞬で吹き飛ばす、明るさとパワーを持った、男の子。


「あはは、おーい!」


会えたことが、ただ嬉しくて。

精一杯手を振り返せば、リュージくんは隣りにいた男の子に何かを渡してから、私のもとまで駆けてきた。

 
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