神様の隣で、君が笑った。
 




「ハァ……」


昼休み、大量のプリントを抱えた私は一人、長い廊下を歩いていた。

ここ最近、溜め息が絶えない。

一日中、考えてしまうのは朝陽のことだ。

ダメだと思っても朝陽のことが気になって、授業中もつい、上の空になってしまう。

そのせいで先ほど私は職員室に呼び出され、苦手な数学の先生からクラス全員分のプリントを教室まで運ぶように言い渡された。

けれど結局、その間も考えるのは朝陽のことばかりだ。

……本当に、何がどうなっているのだろう。

美術室の前で陸斗くんと朝陽が話をして以来、朝陽との間に彼の名前は出てこない。

私も朝陽の前で陸斗くんの名前を出すことは気が引けて、なんとなく私達の間で彼の話題はタブーになった。


「なんか……なんなんだろう」


陸斗くんの話をしないだけで、朝陽はいつも通りなのだ。

陸斗くんに関することを除けば、朝陽は今まで通り、"普通"だった。

 
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