腹黒王太子の華麗なる策略

1、王太子さまと侍女の私

「……アン。アン、起きて。もうすぐ起床の鐘が鳴るよ」

良く知った美声が耳元で響いて、眠りから覚めた。

目をゆっくり開ければ、この上なく秀麗な顔が甘い微笑を浮かべていて……。

「……ん？」

まだ夢でも見ているのかと思って何度も目を瞬くが、何度見ても目の前にいるのは、私が仕えているクリスで、一気に眠気が吹き飛ぶ。

「な、な、なんでクリスと一緒に寝てるの〜！」

目を見開きながらクリスを指差し、声を上げた。

動揺せずにはいられない。

ガバッと起き上がってまず自分の着衣を確認した。

シワがよってはいるが、ちゃんと服は着ている。

そのことにまずホッとした。

クリスが私を襲うなんて……世界が破滅してもないだろうけど。

それでも……女の子だもん。寝ている間に何かあったんじゃないかと気になる。

「そんな大きな声出さない。何事かと思って誰か来ちゃうよ」