腹黒王太子の華麗なる策略
2、俺の事情ークリスside
「逃げられたか」

アンが出て行ったドアを見つめ、苦笑する。

彼女は俺の乳兄妹。

俺の母は身体の弱い人で、俺を生んですぐに亡くなったらしい。

そこへタイミングよく城にやって来たのがアン親子で、アンの母親が俺の乳母となった。

アンの父親はいない。

生きているのか、死んでいるのかも不明。

アンの母親は記憶をなくしていて、アンの父親についても何も覚えていなかった。

手がかりは、アンのあの吸い寄せられるような美しいアメジストの瞳。

この世界では、王族以外の人間は黒髪に黒い瞳が普通だ。

城の者はアンの髪の色は黒だし、彼女の紫の瞳は日光によって変わったものだと信じているが、俺はそれは違うと思う。

アンの瞳の色は昔俺が本で読んだ伝説の王と同じ色をしている。
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