契約書は婚姻届
第9話 婚約者ってなんですか?
隣に座る、尚一郎の手をそっと握ると、強ばった顔だったが少し笑ってくれた。

本邸から呼び出された日曜日。

朝から、スタイリストに髪をセットしてもらい、さらに化粧もしてもらい、着物を着た。

着物は前回、呼び出されたあとに大急ぎで尚一郎が用意してくれたものだ。

 
本邸に着くと前回と同じで、裏口らしきところから中に入る。

前はどうして家族なのに裏口なのか不思議だったが、尚一郎の立場を理解すると朋香は腹立たしくなった。
要するに、あの祖父母は尚一郎を、使用人かなにかと同じくらいにしか見ていないということだ。

「尚一郎です」

座敷に入ると、このあいだと同じで祖父母が並んで座っていた。
今日も、父親は不在らしい。

「相変わらずみっともないあたまだな」

「申し訳ありません」
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