君はガーディアン ―敬語男子と♪ドキドキ同居生活―
私の決意
 誰かの為に、何かをしようなんていうのは、思い上がりだと、ずっと思っていた。
 私は、ともかく自分自身を面倒見られるようにならなくては、と、思ってこれまで生きてきた。

 強いて言うなら、『母のため』に、独り立ちをしたい、と、思っていたのかもしれない。

 でも、母はもういない。

 私は、独りで生きていかなくてはいけない、と、昨日までは思っていた。

 何もない、茫漠とした砂漠を目の前に、一歩踏み出す事をためらうような、そんな気持ちでいたのが、一転した。

 会って、まだまる一日たっていない、弟。
 子供の頃の私を知っているという征治さん。

 我ながら単純だなあ、と、思うのだけれど、今まで、誰かに頼るまい、と思ったことはあっても、誰かの役に立ちたい、と、思ったことも無かった。
 そんな私に、人の役に立てる要素があるという。

 命を失うかもしれない。それはとても怖い事。
 でも、礼門や征治さんに、自分は必要な人間なのだと思って欲しかった。

 朝食を終えて、征治さんの替わりに後片付けをかって出たけれど、ならば一緒に、という事で、二人キッチンに並んで、食器を洗う。
 カウンターの向こうでは、礼門がタブレットで何かを確認していた。

 お茶を入れて、もう一度テーブルに三人着席し、今後の事について話をする事になった。

「白虎の継承って、どうすればできるのかな?」

 最初に私から切り出した。既に自分の気持ちは決まっていた。

「本気? 危険だって、征治から聞いてない?」

「素子さん、もっと、時間をかけて、考えた方が……」

「でも、それほど時間の余裕は無いんでしょう?」

 私がそう言うと、礼門も征治さんも押し黙ってしまった。

「……私ね、今まで、お母さんがいたから、生きてこられた気がしてた、お母さんも、多分私を成人させる為にがんばってくれていたんじゃないかって思える、でも、お母さんに恩を返そうと思っても、もうお母さんは居ないし。うちは、あんまり裕福じゃなかったから、世のため人の為に何かって、あんまりしたことが無くて……」

「だから、誰かの役に立つことで、しかも私に『しか』できない事なら、やってみたいと思う」

 もしかしたら、いきなり現れた弟に、いいかっこしたいだけなのかもしれない、少し自分に酔っているのかもしれない、とも思ったけど。
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