幼なじみの溺愛が危険すぎる。 〜中学時代〜
中学校卒業!
長い祝辞と退屈な式がやっと終わった。

人混みをかき分けてりりちゃんのところに行こうとすると、

うしろから制服の裾を引っ張られた。

振り向くと、下級生の見知らぬ女子。

真っ赤な顔をしてガチガチに緊張している。


「なに?」


そう答えながらも、りりちゃんの姿を遠くに探す。


「あ、あ、あ、あの!如月先輩、ボタン……くださいっ!」


「え?ボタン?」


思いもかけない言葉に、目をしばたかせる。


「ずっと先輩のこと憧れてました。
それで、その、記念に……」


「記念にボタン?」


「はいっ……」


そうしているうちにも、わらわらと下級生が集まってきて、

動けなくなってしまった。


卒業の記念にボタンをもらうなんて、
知らなった。

すると、人込みの向こうにりりちゃんの姿が見えた。


「ごめん、もう行く」


下級生たちをその場に残して、りりちゃんのもとに走った。


「それ、どうしたの?」


「ん?」


りりちゃんが俺の制服を指差した。


「ブレザーのボタンだけじゃなくて、
シャツのボタンまですっかりなくなっちゃってるよ?」


「ああ、ひとつあげたら、次から次へと……。
で、これはりりちゃんに!」


と第2ボタンを渡そうとりり花を見て、
青ざめた。


「り、りり花……‼ ボタン‼ 
なんで、そんなになくなってんのっ‼」


ブレザーだけでなく、シャツのボタンもなくなっているせいで、

下着が見えてしまうギリギリまでシャツの胸元が開いている。


「玲音の後輩くんたちがボタン欲しいって言うから……」


あいつら……‼


あとで絞め殺すっ‼



「でもさ、ボタンなんてもらってなにするんだろね? 

しかも、シャツのボタンなんて小さいから、
すぐになくしちゃいそうだよね?」


胸元をヒラヒラさせてのんきに笑っているりり花を、校舎の影までひっぱっていく。


「りり花! そんなカッコで歩いちゃだめ!」


慌てて着ていたブレザーを脱ぐと、りり花に羽織らせて、

開いた胸元を手繰り寄せて隠した。



「ええっ! さすがに暑いよっ‼」


「いいから‼ それ、家帰るまで着てること! 脱いだら許さないから!」


りり花の手をしっかりと握る。


「それから、絶対に俺のそばを離れないこと!
わかった?」


「どうして?」


「そんなカッコでフラフラすんなよ!」


「う、うん……」



りり花の手をぐいぐいと引いて、
名残惜しむ間も無く中学校を後にした。
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