紳士的上司は愛を紡ぐ
studio2 些細な記憶と思わぬ依頼

入社2年目の夏。

一度特番の為、深夜に収録へ来ていた八王子アナと偶然休憩室で遭遇したことがある。
当時、八王子アナとの共演はなく、彼は丁度人気が出始めた頃で忙しそうにしていた。

休憩室のソファーで死んだように眠る八王子アナを目にし、驚きのあまり釘付けになってしまったことをよく覚えている。

何故だか、いつも画面越し見ている甘い笑顔ではなく、目の前でぐっすり眠る伏せられた長い睫毛と微かな寝息の方が、私にはよっぽどの好印象だった。

人気者は大変だなぁ……。

内心呟きながら、自販機の前で自身のミルクティーを買う。

ガタンッ、と
缶の落ちる音が休憩室に響き、後ろで眠る上司を起こしてしまったのではないかと慌てて振り向く。


「…………セーフ。」

小声で呟き、自販機に向き直る。

そこであることに気付く。
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