ハニートラップにご用心
TRAP7 世界で一番愛しい人

クリスマスシーズンも終わり、世間はすっかりクリスマスの跡形もなく次に来る新年に向けて動いていた。

仕事やら忘年会やら、営業部のエースである土田さんと柊さんは取引先の方からの誘いを断ることができず、色々なところで引っ張りだこだった。

私はと言えば、いつしかの飲み会の場での反省を踏まえて丁重にお断りさせていただいている。もう土田さんを心配させるようなことはできるだけしたくない。


そういえば、年末の生活時間が違いすぎて土田さんと最近家で顔を合わせて話す機会が少ない。土田さんは退勤後に控えた忘年会のために絶対に残業はできないらしく、早朝に家を出て、深夜に帰ってくる。

毎日のように少しだけ青ざめて帰ってきては死んだように眠ってしまう土田さんを見ていたら、恋人としてのわがままなんか吹っ飛んでしまう。


そんな忘年会ラッシュも落ち着き、仕事納めもあと一息といったところ。土田さんは一日中営業回りに出ているので、私はオフィスで黙々と事務作業をしていた。

すでに周辺企業は仕事納めを終えて会社自体休みになっているらしく、今ある仕事といえばコピーを取ったり電話対応をしたりするくらい。これまでの忙しさは何だったのかと肩を落としたくなるくらい、まったりと時間が過ぎていた。


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