悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
初めて味わう情欲に流されかけたその時、突然強い光を瞼に感じ、驚いて目を開けた。

続けざまに雷鳴が轟いて、馬が嘶き車体が大きく揺れる。

座席から振り落とされかけて悲鳴をあげれば、レオン様が私の体を引き戻して、その胸に強く抱きしめてくれた。

急停車した馬車の前方の小窓から、慌てたような御者の声がする。


「申し訳ございません! 馬が雷に驚いて、足を止めてしまいました。車体を点検いたしますので、少々お待ちくださいませ」


レオン様は中腰で小窓に近づき、御者と会話している。

座席に座る私は我に返り、自分の体を抱きしめて、再燃した羞恥の中に囚われていた。


馬車内だというのに、私ったら淫らなことをしてしまったわ。

土砂降りの夜道を歩く人は少なそうだけど、誰かに覗かれなかったかしら?

漏らしてしまった甘い声が、御者の耳に届いていたら、どうしましょう……。


ひとしきり恥ずかしがった後には、なぜか嫌な予感も押し寄せてくる。

悪天候がそう思わせるだけかもしれないが、動き始めた私の恋と結婚話が、このまま平穏に進むとは思えない。

ゴロゴロと鳴る嫌な雷鳴を聞きながら、胸の中に暗雲が広がっていくような心持ちでいた。
< 178 / 307 >

この作品をシェア

pagetop