悪役令嬢の華麗なる王宮物語~ヤられる前にヤるのが仁義です~
ここは王妃の寝室。

刺繍入りのワインレッドのカーテンは開けられて、同色の高級な絨毯の上に眩しい日差しが降り注いでいる。

豪奢な調度類に囲まれた中央には、天蓋付きのベッドが置かれ、その手前に四十六歳の高貴な女性が立っていた。

両脇には、私と同じ王妃付きの侍女がふたり、にやついて控えている。

王妃は侍女の手を借りてペチコートなどの下着は身につけ終え、私がドレスを持ってくるのを待っていた様子であった。


「オリビア、なにをモタモタしているの! わたくしの侍女にグズはいらないわ。今後また、わたくしを待たせるようなことがあれば、家に帰すわよ」


まるで私が何十分も待たせたかのような言い方をされたが、壁際の振り子の柱時計を見れば、衣装選びに費やしたのはわずか五分ほど。

さらに言えば、実家に帰してくれても構わない。


しかし相手はこの国の女性の中で最高位に立つ王妃なので、反論はせずに「申し訳ございません」と形ばかりに謝罪した。

それから王妃に近づいて、隣に立つ中年の侍女にデイドレスを渡す。


彼女は侍女頭のバッカス夫人。

王妃よりひとつ歳下だという彼女は、長年王妃に仕えているせいで性格が似てしまったのか、意地悪な性分だ。

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