私からリアルの恋愛への夢を奪い去り、二次元の世界に逃避させた恋のトラウマとは。
それは、もう遠い昔、中学二年生の頃まで記憶を遡ることになる。


ある春の日。放課後の教室。
私は日直当番で、最後の授業の後、先生に頼まれて、使った教材を片付けに教室を出ていた。


割と時間がかかってしまい、戻ってきた時、廊下からチラッと見えた教室に、既にクラスメイトの姿は疎らだった。


私も早く日誌を書いて帰ろう。
そう思いながら、開いていた教室後方のドアから中に入ろうとすると、『はあ? ふざけんな、バカ!』と、祐が怒鳴る声が聞こえてきた。


反射的にビクッと肩を竦ませ、私はドア口で立ち尽くした。
廊下側一番後ろの席で、バスケ部の練習に行く準備をしていた祐が、会話をしていたらしい友人に真っ赤な顔を向けているのが見えた。
私は、咄嗟に廊下側の壁に張りつくようにして隠れた。


祐が本気で怒ってるのがわかった。
自分が怒鳴られたわけでもないのに、変な緊張感が湧いてきて、私はドキドキする胸を無意識に押さえていた。


『え~でもさあ。家同士で仲がいい幼なじみなんだろ? そういうの、意識したりしないわけ?』


その友人は祐の怒鳴り声に怯んだ様子もなく、冷やかすような嫌らしい言い方で訊ねていた。
壁越しに聞いていた私は、名前が出てこなくても、その内容から私をネタにした会話だと勘付いてしまった。