「最近の雫さん、なんかちょっとおっちょこちょいですね」


先週末に心臓外科医局の歓送迎会も終わり、年度末から少し変化した医局の空気が、そのまま定着し始めてきた四月半ば。


週の初めの月曜日。
いつもよりちょっと遅めのお昼休憩に入り、一緒に学食を訪れた美奈ちゃんが、フォークでクルクルとパスタを巻き取りながらそう言った。
私はギクッとして箸を動かす手を止め、「え?」と聞き返す。


「雫が? 珍しいね」


私の正面に座った早苗さんが、お味噌汁をズズッと啜って首を傾げた。


「例えば、どんな?」

「教授の来客対応でお茶零したり」


美奈ちゃんが、指を折って数え上げ始める。
早苗さんは、その幾つかに「あー、あるある」と、同調してくれながら苦笑している。
美奈ちゃんが報告する私の最近の失態の数々を聞きながら、私はその場に埋まってしまいたい衝動に駆られた。


もちろん、なんの言い訳もできない。
美奈ちゃんが口にした失態の全部、間違いなく私がやらかしたことだ。
祐に突然誘い出されたコンサートの後……ほんの一週間ちょっとの間で。


私は、あの時――。
オーケストラ演奏が終わり、聴衆から割れんばかりの拍手喝采が湧き起こる中、必死に祐を突き飛ばした。
そしてアンコールも待たずに席を立ち、会場から飛び出した。