たった一度のモテ期なら。
会議室の机を叩いて文句を言った綾香は、しばらくしてパッと顔を上げて私を正面から見据えた。

「奈緒。西山を好きなのは本当なのね? なら自分から行ってこい」

「え?それは、無理かな」

「ダメ。そもそも奈緒は受け身すぎる。小林くんのこともそう、確かに奈緒も曖昧にしたんだと思う。だから罪滅ぼしに、ちゃんと自分でぶつかって砕け散ってきなさい」

「でも、迷惑だと思うし」

「単に振られるのが怖いだけでしょ」

綾香がズバッと来る。そうなのかな、迷惑そうな顔されても申し訳なさそうにされても嫌だと思うのは、傷つきたくないからか。

「そうやって誰にでもされるがままで過ごしてくつもりなら、悪口言いふらすよ。私って敵に回すとあんまり楽しくないよ」

なにそれ。そんなの怖くないけど。綾香はなんだかんだと優しいもん。

「奈緒、モテ期だって言ってるでしょ。今恋愛しなくていつするの?」

ぶつかって砕け散るのは恋愛なのかと疑問もあるが、結局お昼休憩が終わる頃には『自分から行く』と約束をさせられてしまった。

でも、いつ、どうやって?
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