全て美味しく頂きます。
2 Sunday ーシャブシャブー
 日曜日。

「確かに。夕食を奢る約束はしましたよ?ええ,しましたとも。___だからって…」

 ざくっ。

 まな板の上の白菜のど真ん中に包丁を入れた私は,私の部屋の真ん中のカジュアルこたつで寛ぐ彼に,ぴしっと刃先を向けた。

「何で夕方から,祥善寺がうちのコタツで寛いでるの!」

 祥善寺は、怒れる私をチラッと見,平然として言い放った。

「こら,人様に刃先を向けるんじゃない。
 いいじゃないか、お互いどうせヒマなんだし?それに…こないだオマエ、コレ見たいって言ってただろ?」

 テレビ画面にはかなり前に流行ったディズニーアニメーションのキャラクターが忙しなく動き回っている。

「まあ…そりゃあそうだけど」

「だろ?
 思い出してワザワザ借りてきてやったんだから、ありがたいと思え。
 それにさ、そもそもオマエだろ?
 外食は高くつくから家飯にしてくれって頼んだのは」

「…私だって給料日前で金欠だもん」

「貢いでんな?」

「ウルサいな!
 仕方ないでしょ、向こうは家庭あるんだからさ。
 それよりも、私だって見たいんだから。
 ちょっとは手伝ったらどうなのさ」

 ちっ。
 彼は軽く舌打ちしながらもノロノロと立ち上がってきた。

 狭いルームキッチンの隣に立つと、物珍しそうにあちこちキョロキョロと見回している。
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