全て美味しく頂きます。
5 Wednesday ー味噌ラーメンー
 水曜日。
 その日の私は、お昼頃からずっとソワソワしっ放しだった。  

「ふーん、今日は外食か。いいの?金ないんじゃ…」
「ん、今日はちょっと予定あるから。
 ほらほら、早くっ」

 何度も後ろを振り向こうとする彼の背中を、私は無理やりのれんの中に押し込んだ。
 ピシャリと後ろ手に引き戸を閉め、カウンターに即オーダー。

「ミソ2つ、普通でっ」
「あいよー」

「…ミソラーメンの普通盛り。俺には選ぶ権利すらないのか…」

「奢りでしょ?文句言わない」

 不満げな彼を黙らせ、私は店内の時計をチラッと見た。
 約束の時間まであと40分。

 今日のお昼、出張から帰っていた杉原さんから久しぶりに連絡があった。

『今夜8時。いつもの場所』

 カウンターの下でもう一度スマートフォンを確認し、私はニッと頬を緩ませる。

 (ちっ、杉原かよ)
 
 面白くなさそうな祥善寺の呟きも、今の私には気にならない。
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