君に捧げるワルツ ー御曹司の恋と甘い旋律ー
Stage.10 ピエトロ・マスカーニ 歌劇 カヴァレリア・ルスティカーナより 間奏曲
翌日、クリスマスの夜の甘い余韻は私の相談事がきっかけで消し飛んでしまった。


「その話なら俺は認めない。あの胡散臭い男にはもう近付くな」


「胡散臭いって言わなくても……澪音は杉崎さんのこと知らないですよね?」


「知らなくても見ればわかる」


澪音が目を細めて眉間に皺を寄せる。どうしても杉崎さんのことが信用できないらしい。


「そもそも、どうして今そんな話をするんだ? そんな男の話に水を差されたくはないんだけど」


二人ともまだ肌が汗ばんでいて、ベッドの中で澪音に抱き寄せられるとしっとりと吸い付くようだった。

体は重たく沈んで、力が入らない。このまま眠ったらとても幸せだろうと思うけど……


「レッスンの予定が明日なんです。澪音に黙ったまま行きたくなくて」


「明日か。どちらにせよ行くな」


澪音が歯を立てた首筋に、痛みと痺れが同時に走った。



* * *


今に至るまで、今日の私は幸せで胸が締め付けられることばかりだった。


朝起きると私はベッドに寝かされていて、澪音はもう部屋に居なかった。澪音が起きたときにソファから移動してくれたようだった。テーブルには置き手紙があり、


『マフラーありがとう。今夜九時頃帰る。

気が付いたら寝てた、ごめん。柚葉のおかげで良い夢を見た』


走り書きのようなメモを見て、朝から飛び跳ねた。


「澪音ってば! こういうの嬉しくて心臓に悪いんですけどっ」



一人なのをいいことに、恥ずかしげもなく独り言を言ってその置き手紙をバッグの中に回収する。


その後は澪音と過ごせる時間を楽しみにして、執事の茂田さんによる頭の痛くなるような講義を何とか乗りきった。
< 128 / 220 >

この作品をシェア

pagetop