彼から指定された日にメールに記載された地図の場所に向かうと、大使館のような洋館にたどり着いた。


これ、個人宅なんだろうか……?大きすぎて現実味が無い。


渋谷駅から近かったので勝手にカジュアルなダンスフロアを想像していたけれど、ここは松濤という高級住宅街らしい。渋谷の喧騒とは無縁の豪奢な佇まいに緊張が走る。


門前に待機している燕尾服の男性に、恐る恐る「有坂です」と名乗る。この人の見た目はまるで執事だ。


パーティーでの衣装は全て準備していると言っていたので私服で来たけれど、カジュアルな洋服が完全に浮いてしまっている。


「レオン様のお連れ様ですね。伺っております。こちらにどうぞ」


レオン!?外国人のような名前があの人の名なんだろうか。


この日の約束をしても「知らなくても支障ないから」と名前すら教えてくれなかったので、私は彼について何も知らない。


案内されるままに部屋にたどり着くと「本日は御世話係を勤めさせていただきます」と、古風なメイドの方に深々とお辞儀をされた。


「あの、おかまいなくっ!」


こんな所だとは聞いていない。あのピアニストめ、なんて所に連れてこさせたんだ。そして何者なんだ。


座っていいか迷うような豪華なソファに案内され、同じく手に取るのを躊躇うようなティーセットで紅茶がふるまわれる。


もう緊張で冷や汗が限界だ。


「有坂様。御加減でもよろしくないのでしょうか?」


「いえいえ、全然!元気いっぱいです」


額の汗を勘違いしたのかメイドの方が心配してくれるので、慌てて否定する。


「そうですか、それは良かった。

ではお支度を始めさせて頂きます。今日はレオン様のための舞踏会ですから。

レオン様のパートナーとして、晴れの日に相応しい装いとしましょう」


レオン様のためのパーティーって何だ?


メイドの方に上品に語られた内容が一ミリも理解できず、ただ苦笑いを浮かべた。

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