Hold me 副社長の瞳と彼女の嘘
契約の終わり
友梨佳は混乱していた。
あの日以来、初めて体の関係を持たず、始を頼り始の腕で安心して眠った自分の感情が怖くなった。

もう会わない方がいい。何度もそう思った。
始からの都合を聞く連絡に、会いたい気持ちを押し殺して、何かと言い訳をするように断ってきた。

(私は誰も好きになったりしない。誰にも頼らない……)
そしてその事を自分に何度も言い聞かせた。

そんな友梨佳の気持ちなどお見通しなのか、何度か予定を断り続けると、

【今日の夜ウィンストンホテル。契約だ】

その文字に、友梨佳はため息をついた。


友梨佳はぼんやりと昔を思い出していると、ガチャリと扉が開いて、ネクタイを緩めながら始が部屋へと入ってきた。
「おかえりなさい」
「ああ」
真っすぐと自分の方に歩いてくる始にドキッとして、友梨佳は目を逸らすと、
「先にシャワー?ご飯?ルームサービス……っん?」
いきなり距離をつめられ、首筋にキスをされて、友梨佳は驚いて始の胸を押した。
「ちょっと……シャワーぐらい……それに言われた通りルームサービス……」
その言葉はすぐにのみこまれた。
「ねえ」
「黙って。俺をずっと無視したお仕置き」

始にそう言われ友梨佳はため息をつくと、諦めたように始の首に手を回した。

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