いつか羽化する、その日まで
Day 12 : 私、なんとなく気付いていました。

ついにインターンの最終週になってしまっていた。三週間は、なんてあっという間なのだろう。

昨日は出勤した途端、所長と小林さんから本当に大丈夫だったかと心配されてしまった。二人のあからさまな態度と、近くで文句を言う村山さんとのコントラストが面白かったので笑ってしまう。

既に村山さんと一緒に外出してから四日が経っている。あの日見たり聞いたりしたものは全てが新鮮だった。村山さんの調子のよいところに腹を立てることもあったけれど、思い返せば楽しかった……のかもしれない。

何だかんだ言ってもあれから彼との関係は割と良好で、残り一週間を悔いの残らないように頑張ろうと張り切っていた。


今週は営業所内での業務がメインとなるため、小林さんと村山さんから頼まれる入力作業と電話取り次ぎに精を出す。自分で言うのもおかしいが、少しは様になってきたような気がして嬉しい。

口元を綻ばせたまま、机の上に置いている黄色いカバーのシステム手帳を手に取った。
正直、手帳なんて今まで必要ともしておらず、携帯のカレンダー機能だけで生活していたのだが。
就職活動だけではなく、その先の社会人になったときのために、やはり手帳はあった方がいいらしい。香織にも『まさかインターン先で、堂々と携帯見るわけにもいかないでしょ』と言われたのだ。

ほとんどのページが未だ新品のように真っ白だが、今月のページにはしっかり〝インターン〟と書いている。その部分を指でなぞり、私はもう一度気合いを入れ直したのだった。


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