【完】こちら王宮学園生徒会執行部

・それではお家訪問です








土曜日、午前10時。

ぴんぽーん、と、チャイムが来客を知らせる。



「はーい」



ぱたぱたと玄関まで駆けていき、扉を開ければ。



「おはよ〜」



揃っているのは生徒会のメンバーで、口々に「おはよう」を言ってくれる。

それに「おはよう」を返してぞろぞろと上がってもらう途中で、「ん」と夕陽が渡してくれたのは『Juliet』のロゴが入った白い紙箱。



今日は、例の"歓迎会"の日。

いつみ先輩からの提案を伝えれば彼らはすぐさま飛びついて、生徒会棟で行う予定だった歓迎会は、わたしたちの家で実行されることになった。



とはいえ、歓迎会というのは名前だけだけど。




「わざわざケーキ買ってきてくれたの?」



「……あいつら、俺に一番金稼いでるだろって集(たか)ってきたから。

まじで後輩をなんだと思ってんの」



「え、なんかごめんね。

ケーキ代ぐらいわたしが返すけど、」



「いいよ別に、間違ってはないんだし。

……ナナに払わせるくらいなら、絶対あいつら割り勘するだろうから」



さらりとわたしの髪を撫でて、そう言う夕陽。

なんだか大人になった気がする、なんて思いながらお礼を言えば、彼は嫌味のない表情で微笑んでくれた。──その、やわらかい微笑が。



「……なんで兄貴がいんの?」



リビングにいた先客によって、途端に歪んだ。



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