お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
ツキなし女子
「……で?今度は一体どうしたんだ?」


街路樹の根っこに足を引っ掛けて転んだ翌朝、私はまたしても藤田外科病院の中にいた。

まだ誰もいなくて診療時間前だったせいか、イケメンドクターの表情は険しくて__。


「いや、あの……今朝の朝食に使った食器を洗ってただけなんですが、どうもグラスに亀裂が入ってたらしくて、手を入れて回した瞬間に割れちゃって……」


それで気づくと人差し指の根元がUの字に切れてた。
しかも鋭利な刃物で皮を削ぎ落としたかのように、ペロンと薄皮が剥けていて。


「見るからに自分で何とか出来るレベルじゃないなと判断が着いたもんですから」


とっても落ち着いて説明してるんだけど、ここに至るまでは昨日転んだ時と同じくらいの動揺がありまして。


へへへ…と笑ってゴマかす私のことをドクターは冷めきった眼差しで睨んでる。
そんな顔されてもなぁーと言うか、とにかく早く何とかして。


切った瞬間は傷口からは止めどなく血が溢れ、止血しようにも傷を押さえるものが咄嗟には見つからなくて、目の前にあった手拭き用のハンドタオルを押し当ててやって来たんだ。


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