お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
弟ドクター
「土曜日の診療は午前だけなんだが…」


眉間にシワを寄せて睨むドクターの顔を上目遣いに見て肩を竦める。
そんなことは分かってますよと言いたいけど、言えば絶対に怒鳴られるよね。


「すみません。昨夜残業で帰りが夜中だったから…」


早く起きるつもりで目覚まし時計もかけて寝たんだ。
なのに、夜の間に電池が切れてアラームが鳴らず、目覚めると昼の十二時近い時間だった。

連日のツキの無さのせいで、ケータイはまだ買い直しにも行けてない。
いつもならバイブもアラームも連動して、何があっても起きれるようにセットしてるところなのに。


「だったら月曜日に来いよ」


不機嫌マックスなドクターは、呆れつつも白衣を身に付け手を洗う。
どうやら見捨てる訳にもいかないのか、そこは有難いと思った。


「ほら、先ずは昨日縫ったところを見せろ」


手を拭きながらやって来て、四角い台の上に乗せろと言う。
こっちは荒治療をされるんじゃないかと予想し、怯えるように手を置いた。


自分の手にアルコールを吹き付けて揉み込んだ後、包帯を解き始めるドクター。

< 30 / 203 >

この作品をシェア

pagetop