お願いドクター、毒よりも愛を囁いて
ドクターの彼女
藤田外科病院への通院が終わり、日常が戻ってきたかのように感じた。
でも、実際はそうじゃなく、ツキの無さは変わらずに続いてる。

モーニングコーヒーを買えば落っことしてしまったり、搬入された商品を検品してたら紙で手を切ったり……。


何かしらツキの無いことが起こったら思うのはあの人のこと。
何やってんだと怒鳴られ、毒を吐く人__


(どうしてあんな人のことを思い出す?)


紙で切った指を水洗いしながら考える。
あれから三日、やっと顔を合わさずに済むようになったのに。


水道のコックを下げて水を止め、ハンドペーパーで拭き取ってる時だ。
給湯室のドアを開け、村田さんが入ってきた。



「あ…」


小さな驚きと共に発せられた声。
あの夜以来、まともに会話ができないでいたから構えた。



「お疲れ様です」


普段通りにしないと。
あの件については村田さんが悪い訳じゃないんだから。


「お疲れ様。どうしたの?」


ハンドペーパーを指に巻いてる私を見ながら聞く。
ああ、と答え、紙で切ったんですと言った。


「そうなの?大丈夫?」


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