雨の降る世界で私が愛したのは
雨の動物園
閉園近い動物園に人はまばらだった。
正門をくぐるとすぐにピンクのフラミンゴ達が出迎えてくれる。
羽を雨に濡らせ一本足で休んでいる。
「人間」「食べ物?」「違う」
小さく飛び交う言葉の群れの横を通り過ぎる。
しばらく鳥類の檻が続く。
ペリカン、ワシ、タカ。
どの鳥たちも一凛と依吹がやってくると同じような言葉を口にした。
「鳥ってあんまり頭良くないけど、カラスは別格だ」
依吹は近くの木から檻の中を見下ろしているカラスを見て言った。
一凛も同じように見上げるとカラスと目が合いすぐに視線をそらす。
「バーカ」
頭上で聞こえた。
「相手にすんなよ」
「うん、分かってる」
以前カラスと言い合いになり、最後は完全にカラスに言い負かされるという散々な目にあったことがある。