雨の降る世界で私が愛したのは
第二章

銀白色の背中



 一凛は腰まで届きそうな長い髪を時間をかけて丁寧にとかす。

「行ってきます」

 キッチンで洗い物をしている母親に声をかけ玄関のドアを開け傘をさす。

 薄いピンクの大人物の傘。

 十七歳の一凛に大き過ぎることはない。

 家を出て一つ目の角を曲がると颯太(そうた)が黒い傘をさして待っている。

「おはよう颯太さん」

「おはよう一凛ちゃん」

 二人は並んでバス停に向う。

 三ヶ月まえ一凛は颯太に告白された。
 
 中学の時からずっと好きだったと。

 一つ年上の颯太を一凛も中学のときから知っていた。

 自分の入学した高校に颯太がいることを知ったのは、入学式の当日だった。

 生徒代表として挨拶する颯太は輝いていた。

 中学の時も女子から人気があったが、高校ではそれをはるかに上回っていた。

 そんな颯太にいきなり告白されて一凛はただ驚いた。



< 27 / 361 >

この作品をシェア

pagetop