雨の降る世界で私が愛したのは
第三章

再会

 

 久しぶりの日本の雨はイギリスよりも重く濃い香りがした。

 一凛の目の前に赤い車が止まる。

 助手席に乗り込む一凛に運転席からほのかは声をかける。

「荷物は?」

「全部イギリスから送った」

「じゃ、このまま飲みに行っちゃおうか」

「馬鹿、運転どうするのよ」

 国際線のCAになったほのかとは一凛が日本を離れてからもずっと続いていた。

 ほのかが仕事でロンドンに来ると一緒に食事に出かけたり、時には夜の街に二人で繰り出し朝まで遊んだりもした。

「一凛が日本に本帰国するなんて意外だったな、ずっとイギリスにいるのかと思った」

 ほのかはハンドルをきりながら赤いパイプを口に加える。

「タバコ止めたんじゃないの?」

「これはベイプ」

 ほのかは口から真っ白な煙を大量に吐き出した。

 水蒸気のそれは普通のタバコと違って匂いがしない。

 ほのか曰く、今どき普通のタバコなんて時代遅れなんだそうだ。


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