記憶の中の記憶
第5章 記憶の塗り替え
それから1か月後。

私は、良人に付き添い、リハビリを手伝った。

今では人工呼吸器も取れ、車イスで移動できるようになった。

「もどかしいよ。どこに行くにも、車椅子。」

良人は小さく、ため息をついた。

「私、その気持ち分かるわ。松葉杖を着いていた時は、本当にイライラしていたもの。」

自分の足なら、意識しないのに。

松葉杖だからこそ、余計どこに杖を着くか、滑らないかとか、変な気を使っていた。

「俺、歩けるようになるのかな。」

「なるわよ。私が歩けるようになったのよ?」

車椅子を押しながら、私は逐一、良人を励ましていた。

「珠姫。結婚はいつにする?」

「結婚?」

急に出た単語に、無意識に吹いてしまった。

「そんなに、急がなくてもいいんじゃない?」

「うん、でも……」

良人は私の手に、自分の手を重ねた。

「早くしないと、珠姫が遠くに行きそうな気がして。」


< 124 / 146 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop