トライアングル・キャスティング 嘘つきは溺愛の始まり
3 カメラテストと恋人役
その日、瑞希の一日は意外な電話から始まった。



「……カメラテスト、ですか?」



「そうなの。こないだ偶然ね、瑞希さんを見かけたクライアントがあなたに興味があるんだって。


あなたさえ良ければ、カメラ映りのチェックに来てほしいんだけど。」



全く想像もしなかったことだけれど、これってチャンスなのかなと思った。



もし上手くいけば、兄と同じ場所へ行ける。



憧れの背中を追いかけることができる。



同じ仕事をすれば、悩みを相談しあってもっと近い存在になれるかもしれない。



「行きます!


私で良ければぜひ、テスト受けさせてください。」



…………このときの私は、単純に兄の側に行けることにはしゃいでいた。


この日をきっかけに、私たちの生活が変わってしまうなんて思いもしなかったんだ。
< 45 / 235 >

この作品をシェア

pagetop