同じ空間にいるのにその近くへ行けないもどかしさが、私のイライラを募らせていた。


「ミオリ、私、先に部屋に行くね」

「え? ちょっと麻耶!」


騒がしい宴会場をひとり出た。
ひんやりとした空気が漂う廊下は、乾杯の時に一杯だけ口にしたお酒の余韻も一気に冷ましていく。

桐島さんなんか、もう知らない。
クリアになった頭でも、やっぱり思うことはひとつだけだった。

でもこれじゃ、桐島さんには呆れられるだろうな。
いつでも一緒にいなければ成り立たない恋人なんて、桐島さんは願い下げに違いない。
そんな女を選んだつもりはない、と。

わかってはいるけれど、心が言うことを聞いてくれなかった。


「麻耶!」


ふと私を呼び止める桐島さんの声が、渡り廊下に響いた。


「どうかしたのか? 具合でも悪いのか?」


足早に駆け寄った桐島さんが薄明かりの中、私の顔を覗き込む。

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