鬼部長に溺愛されてます
ふたりきりの残業


「それじゃ、麻耶、悪いけど先に帰るね」

「うん、もうすぐ終わるから心配しないで」


申し訳なさそうに帰るミオリを見送り、早速続きに取り掛かる。
誠吾と約束があると言われれば、ふたりを応援する私としては残業を引き受けないわけにはいかない。
同じ部署のみんなも帰ってしまったし、私も早く片付けて帰ろう。

来月の会議室や応接室のスケジュールをパソコンに入力しつつ、被っている箇所はないか一つひとつチェックしていく。

この営業会議と部長会議は、出席者が被っているから時間をずらしてもらわないとならない。佐野部長へメールを送っておこう。

そうして最後のひとつまでチェックをし終えたときだった。
総務部のドアが開けられる気配に振り返ると、そこには忙しなく入ってきた桐島部長が驚いた顔を浮かべて立っていた。


「……なんだ水原、まだ仕事してたのか」

「はい、ちょっと急ぎの仕事があって」


そう答えたものの、桐島部長の耳には私の声が届いていない様子でみんなの机やキャビネットの上を物色し始める。

なんだろう……?

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