鬼部長に溺愛されてます

戸惑って困惑して、なにがなんだかわからない。
なんの言葉も紡げないまま、私はその広い胸に収まった。
心臓の音が不規則に弾む。


「……わからないです」


かすれた声をだすのがやっとだった。
部長に気持ちが届くなんて、私にとっては現実離れもいいところだ。こうされたって、すぐには事態を飲み込めない。


「それじゃ、どうすればわかるというんだ」


腕の中で見上げると部長は困ったように笑い、信じられないことに彼の唇がゆっくりと落ちてきた。それはあっと思う間もなく、額にそっと触れる。

驚きで硬直する身体に、心拍数はぐっと上がる。

次に下りてきたのは鼻先で、違う場所を予想していただけに、期待を裏切られた気になる。思わず拗ねたようにして見つめると、ようやく待っていたものが唇に触れた。
冷徹非道を微塵も感じさせない、足が浮くようなキスに意識が遠のく。


「これで社内恋愛確定だな」


部長はキスの合間に観念したように囁いた。

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