【完】姐さん!!
01 ◇ 姐さんって呼ばないで







世の中には、自分ではどうすることもできない無慈悲な状況というものが存在する。

そしてそれを他人に言わせれば、"理不尽"という言葉で片付けられるのだ。──なんて。



まじめな口調で語るのは良いものの。



「まったくもって解せない」



ぽつり、つぶやいたわたしに。

彼は「仕方ないんじゃねえの?」なんて簡単な言葉で済ませようとする。しかも視線はがっつりスマホ。



……ムカつくからスマホのパスワード勝手に変えてやろうか。



「仕方なくない。

っていうかそもそもなんでこうなってるか知ってる?衣沙(いさ)くんよ」



「なにその胡散くさいしゃべり。

知ってるよなるみちゃん。俺のせいだろ?」




ふわり。

ミストパーマをあてたやわらかな黒髪が揺れる。



しかも今日は片方を編み込んだアシンメトリーのヘアスタイルで、綺麗な顔が余計に際立つ。

前髪の隙間から覗いた瞳がようやくわたしを捉えて、ゆるく細められた。



「……わかってるならどうにかしてちょうだい。

わたし最近女の子達からも『姐さん』って呼ばれるようになったんだけど。おかげで彼氏できそうにないんだけど」



「つくる気もねえのにしれっと嘘つくじゃねえの。

だいじょうぶだよ〜気が向いたら俺が彼氏になってやる」



「一生向きそうにないわね」



「うん、言いながら俺も思ったわ」



……ほんとうに、解せない。



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