孤独な死神
始の噺 ハジマリのハナシ

愛してほしい

あるところに少年がいた。その少年はとても美しく天才であった。
少年と家族の仲は良好で少年はとても幸せだった。

しかし、ある時少年は家族を失った。

殺された。

少年は悲しかった。

少年の父親はとある大きな会社の社長だった。その社長が亡くなった。
それは瞬く間にニュースとなり世界中に激動が走った。

家族の葬儀が行われた時親戚たちがやってきた。少年をジロジロと見て値踏みをしたのだ。

少年は怖かった。


少年は人とは違う色をしていた。

少年はクォーターだった。
それでも家族は少年を認めてくれた。


だけど。

親戚は口々に少年を罵った。果てには少年の両親までもを罵ったのだ。

『気持ちの悪い。』

『変な子』

『異質』

と。


しかし少年は社長の御曹司であった。その膨大な遺産は全て少年の物となった。

すると今度は親戚達が少年を取り合った。
少年を散々罵ったのに遺産があると分かった途端目の色を変えた。
先程まで散々罵っていた口は途端に優しい言葉を吐いた。まるで先程あったことなど忘れてしまったかのように。

吐き気がした。気持ちが悪かった。

なぜこの人たちは当たり前のように僕に話しかけるんだろう。なぜこの人たちは僕を見てくれないんだろう。なぜ。なぜ。なぜ人間とはこんなにも愚かなんだろう。

少年はこの時5歳だった。天才であった少年は親戚たちが何を欲しがっているのか、どうしてこのように手のひらを返したのか、理解した。否、理解してしまった。

少年は僅か5歳で大人の世界を知った。それはとても汚く淀んだドロドロとした世界だった。
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