素直にバイバイが言えるまで
静かに降り積もる好き
ーー龍吾に…いや、誰かに頼った気持ちで生きて行くのはやめよう


その事件以来、大好きなはずの龍吾に強く抱きしめられていても、距離みたいなものを感じていた。


龍吾もきっと、同じ気持ちだったのかもしれない…


それから更に半月経った頃、龍吾は私のアパートの合鍵を、そっとテーブルの上に置いて行くことを選んだのだった。


『今までありがとう。
そしてゴメン』


置き手紙には、そう書かれてあった。

パジャマ代わりにしていたジャージと、大好きなミュージシャンのCDが何枚かなくなっていた。

ーー本気で出て行ったんだ…

空きスペースができて傾いたCD。


2人が繋がっていた証拠が消えてしまったような気がする。


大学近くにあるワンルームの部屋に行き、今すぐ龍吾に謝りたかった。

ーーとにかく会いたい


でも、それと同じくらい、金輪際、電話もメールもしてはいけない、という気持ちもどこかにあって、行動に移すことができなかった。


単なる意地っ張り。


そうやっていつも損をするのは、自分なのだ。







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