メトロの中は、近過ぎです!
外回りから戻ってきてパソコンに向かっていると、階段をドタドタと登ってくる大きな足音が聞こえてきた。
戻ってきたのは、北御門(きたみかど)係長。
係長と言っても何々係というものがあるわけではなくて、とりあえず付けられた役職。

北御門さんは以前は東北支社の課長だったらしい。
次期東北支社長と噂されていたやり手の営業マンだったけど、東北支社長とケンカして係長に降格、更にこの営業3課に飛ばされたそうだ。

訳ありな人が集まる3課では、珍しくないトラブル事だけど

その北御門係長が大股でまっすぐ課長の席に向かった。

「課長、ちょっといいですか?」

ヘビースモーカーでギャンブル好きで、声が大きい北御門さんを苦手な人も多い。だけど私はその有言実行の営業スタイルを素直に尊敬している。

ミーティングルームの中で、松尾課長と北御門さんが顔を付き合わせて話している。

「どうしたんでしょうね?」
伊藤チーフに話しかけてみた。

「んー」
眉間にシワを寄せたチーフ。
チーフも知らないようだ。

ミーティングルームでは課長が椅子の背もたれに寄りかかり目を閉じて、両手を頭の後ろで組んでいる。
課長が考え事するときのクセだ。

「なんかあったんですか?」
さっき戻ってきた戸田君も心配そうにしている。

しばらくすると北御門さんが出てきた。

「南、伊藤、入ってくれ」

南主任と伊藤チーフ。課長と係長。これが営業3課のTOP4。

なにかあったんだ。
< 77 / 309 >

この作品をシェア

pagetop