侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
ルース伯爵邸舞踏会
ルース伯爵邸 ホール入口 

「ウィザーク侯爵 レイモンド=シャイロンクライン様!! メイヤー家御令嬢 エセル様!!」

入り口で侍従が声を張り上げた途端、会場中の皆様の視線が一斉にこちらに集まりました。

無理も無いです。先日の結婚式スキャンダルの関係者二名が、仲良く揃ってやって来たのですから。

「ミシェルは田舎で療養中。両家の間には何のわだかまりも無い。それからくれぐれも私に恥をかかせないように振る舞い給え。良いな?」

このぉ、俺様侯爵っ!
あんたの借金返済期間延ばす為に、来たくも無い舞踏会に来てやってるんだから、ちょっとは感謝しなさいよぉぉ!! 
と心の中で叫びつつ、「承知致しました」と大猫被ってにっこり微笑み、いざ壁際へ。 

あれれ、レ、レイモンド様? 
お手々をお離しになってプリーズよ。

微妙な表情で見つめあう私達。

何だか嫌な予感がします。
あなた、ダンスとか言いませんよねぇぇ!?

「おい、どこへ行くんだ?」

「わたくし、侯爵様にご迷惑をお掛けしないように、取り敢えず壁際へ行って壁布に溶け込んでいようかと。(華では無く、壁そのものになりたい) ……そうだ、帰りの待ち合わせは何時にしましょうか?」

「十一時半にこの場所で。それより、そんな派手な真っ赤なドレスでイエローゴールドの壁に溶け込めると? 君は本当に冗談が好きだな、ははは」

「ほほほ(何とでもおっしゃいませ)……ではそう言う事で(解散!)」
と歩き出そうとしましたけれど、この人、手を離してくれませんのぉ。

「両家の間に問題が無いように振る舞えと言ったろう? 踊ってやるから来給え」

やらなくて結構ですってーー!! 

「あの……今更ですが、わたくしダンスは得意ではないんです。侯爵様に恥をかかせてしまいますし、どうか他のご令嬢をお誘い下さいませ」

哀願にも等しい言葉など全く無視して、レイモンド様は私の手を取りド真ん中まで進み出られました。

シャンデリアが眩しすぎる~。
あ、そうだ気絶しちゃう? おホホ

そんな事を考えていると、四方八方から何かが私目掛けてビュンビュン飛んできます。

グサッ、痛っ! ご令嬢方のジェラシービーム、痛くて熱くてハンパないです。

薔薇の如き皆さんの……棘だらけの視線が雄弁に語っていらっしゃいます。
『どうしてあなたごときが!?』『そこをお退き!』『身の程知らず!』『転んでおしまいなさい』と。

この人に言ってよーっ!! 
私だって、代わって貰えるものなら代わって欲しいんだってー!!

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