侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?

ルイーズside


それは今から半年ほど前のある日のこと

外は冷たい風が吹き、木の葉が舞い散る寂しい季節になっていましたが、社長室に呼ばれた私の心は、春の野原に遊ぶ蝶々のようにヒラヒラふわふわ軽やかです。

うふふっ。

「お前がうちに(メイヤー商会)来てから、もう三年も経つんだなぁ……」

ルーカス様(心の中ではそうお呼びしています)は、マホガニーの大机で書き物をする手を休め、前に立った私に優しい目を向けおっしゃいました。

「深層のお姫様のことだ、すぐに音を上げるだろうと思ったが、荒くれ男に混じって歯ぁ食いしばって……、いやぁお前の根性には恐れ入った」

「いえ、そんなことは……」

褒められて嬉しいはずなのに、心がちっとも躍りません。

どうしてそんなことを唐突におっしゃるのか、不思議でなりませんし、しみじみとした声と眼差しに不安が募るのは気のせいでしょうか?

「知っての通りお前さんのお陰で、うちはガッポリ儲けさせてもらった。そこでだ、『ルイーズ銃』の製造から販売までの権利をお前にそっくり渡すから、それ持って独立しな」

ドクリツ?

一瞬何を言われたのか理解できませんでした。

そして数秒遅れで心臓が激しい痛みを伴ってぎゅっと縮こまり、そのまま凍り付きそうでした。

「わたしを放り出す気ですか……?」

日焼けした目の前の顔を見つめながら、我知らず小さな声が零れ、それを拾ったルーカス様は「放り出す? 馬鹿言うな、ご褒美だ」と、目を丸くしています。

馬鹿おっしゃっているのは貴方です。

「設備投資だ何だかんだ、かかった金は何百倍にもなって返ってきた。若い娘が捨て身で企画した『ルイーズ銃』で、これ以上うちが甘い汁吸うわけにはいかねぇ。悪党の俺だって、そのぐらいの恥は知ってる」

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