侯爵様のユウウツ 成金令嬢(←たまに毒舌)は秀麗伯爵がお好き?
メイヤー邸 応接室
数時間後、メイヤー邸 応接室

レイモンド様がいらしていますが、何故か私も父に呼ばれて同席しています。
二人っきりだと気まずいからでしょうか? 巻き込まないで下さい。

レイモンド様は苦い顔をしつつも、淡々とこんな内容の事を話されました。

ミシェル様は周りの人達が少し目を離した隙に、『お兄様、あとの事は宜しくお願いします。ごめんなさい』と書かれたメモだけ残し、花嫁の控え室から姿を消したのだそうです。
その後一時間以上探し回ったけれど、結局見つからなかったのだと。

侯爵邸の金庫に置いてあった現金三千万リブランも消えていて、侍女に確認したところ、他にも貴金属類、父が贈った宝石も全て持って行かれたのだと言う事でした。
きっと誰かが手引きをしたに違いない、ともレイモンド様はおっしゃいました。

「へえぇ、そうですか。ですが逃げた妹御の事など、ハッキリ言って、もうどうでも良いんですがね。今の私の興味は、用立てた金や贈った宝石が、いつ戻って来るかと言う事だけです。実際の宝石が無理なら購入代金でもいいんですよ、侯爵様」

「すぐには無理だ」

「そうですか……、合計で五億五千万リブラン位だったでしょうかねぇ、あの宝石の権利書の名義は全て私ですから、訴えれば、あなたの妹さんは窃盗犯という事になりますね?」

「何を言うっ!」

レイモンド様は片方の眉を跳ね上げ言い放ちましたが、父も負けてはいませんでした。

「もとはと言えば超が付くほど浪費家のあんたの妹に、賭博場で泣きつかれて、ブタ箱行きになる直前、賭博やら宝石やらの借金を全部清算して助けてやったってのに、教会で赤っ恥をかかされて怒り狂いたいのはこっちですよ、お偉い侯爵様!」
と声を荒らげましたが、無理もない事です。

恐らく父は今日の事で、今シーズン最大の笑い話を社交界の皆様に提供してしまいましたから。
底意地の悪い笑顔と笑い声が、臨場感あふれる映像と共に頭の中を駆け巡ります。

< 2 / 153 >

この作品をシェア

pagetop