御曹司のとろ甘な独占愛
「やあ、一花ちゃん。久しぶり」

 ブラウンのブリティッシュスーツを着こなした長身の青年・常盤慧は、片手をあげて挨拶した。
 彼は今日もふんわりと華やかなアスコットタイを結び、王子様の仮面を被った王様のような抗いがたい雰囲気を纏っている。

 一花は瞬間的にゲッという表情をしてしまい、慌てて微笑みを浮かべた。

「いらっしゃいませ。……翡翠はお嫌いではなかったですか?」

 またお母様へのお買い物だろうか? と一花は小首を傾げる。

 ホテル・エテルニタのイメージカラーでもあるエメラルドこそ至高の宝石としている彼は、どうも翡翠を敵視しているらしいと、伯睿から聞いている。
 なので一花の言葉に悪気は全くなかったのだが、慧は面白そうに「うわ、言うようになったね」と口の端を引き上げる。

「ジュエリーショーも終わったし、台北滞在は今日で最後なんだ。今夜くらい、僕と一緒にディナーへ行かない?」

 甘いマスクに微笑みを浮かべながら、慧は勝手に店内のソファへ腰掛けた。

「ジュエリーショーは、その、お疲れ様でした。とっても有難いお誘いですが……大変申し訳ございません。お母様にも、どうぞよろしくお伝えください」

 一花は翡翠嫌いを相手に顔を引き締める。
 御断りの言葉を淡々と述べながら、「常盤様とだったら、一緒にご飯に行きたいのになぁ」と、慧に対して失礼なことを考えながら、丁寧に腰を折った。
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