軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
◆八章◆
聖女は二度、攫われる
カエトロ―グ島の神殿に監禁されてから、五日が経っていた。
食事は与えられるものの、ずっと楽園に閉じ込められていたせいか精神的に疲弊している。
ここへ来てから、まだ礼拝には赴いていない。
(フェンリルは、なにを考えているのかしら)
すぐにでも聖女として働かされると思っていた。しかし五日もこの庭園に監禁されて、セレアの胸には神に仕えるとは名ばかりのあくどい大神官への疑心ばかりが募っている。
「聖女様、礼拝の時間です」
そして、ついにこのときが来た。虚ろな眼差しで開け放たれた扉を見やる。セレアの返事など最初から求めていないのか、こちらを一度も見ずに淡々と手首に枷をつけられた。
そのまま強引に立たせられると、どこか心配そうな獅子神の眼差しを背に受けつつ、ふたりの神官に礼拝堂へ連れていかれる。