軍人皇帝はけがれなき聖女を甘く攫う
◆二章◆

看病のお礼



 それから、セレアは数日に渡りレイヴンの看病を続けた。三日もすれば傷も塞がり、ふらつくことなく室内を歩けるまでになっていた。


「ただいま戻りました」


 朝の礼拝を終えて部屋に戻ると寝台の上で片膝を立て、壁に寄りかかりながらセレアの童話の本を読むレイヴンの姿があった。


(相変わらず、綺麗な人ね)


 かきあげられた前髪の下には目鼻立ちのきりっとした玲瓏な顔がある。近づくことすら罪深いような気高さを纏っており、うっとりと見惚れた。


「セレア、ここに童話以外の本はないのか」


 名前を呼ばれて夢から覚めたように現実へと引き戻される。


 本から顔を上げ、ゆっくりとこちらに視線を向けてきたレイヴンの顔は、げんなりとしている。確かに成人した、しかも男性が童話を読むのはさぞかし退屈だろう。

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