聖なる夜に来る待ち人は
そうして音楽室から各教室に戻ってSHRを終えた。


お昼休み当初はファン軍団が居ようものなら全力で逃げようなどと考えていた。

しかし、先程の音楽室でのやりとりを思い出すとそれはとても寺川くんに失礼だと思うようになった。

なので下駄箱まではるちゃんと一緒に行き、その後そこで別れて私は自転車を取りに行った。


駐輪場まで来て見ればそこには寺川くんが居た。


「来てくれたんだね。すごく嬉しい。それじゃあ行こうか
?」


そう言って笑ってくれた寺川くんが何故だかすごくカッコよくて胸がトクンと高鳴った。


「うん、ドーナツ屋さんだよね?」

そう返すと


「うん。他にも行きたい所とかあれば一緒に行こう。終われば送ってくから。」


そう言ってくれた寺川くんはここに来てから落ち着いた柔らかな笑みを見せてくれる。

その顔を見るとトクントクンと胸が高鳴っていくのだ。

なんでよ?

こんな誰もが大好きなイケメンなのに。
そんな人と釣り合う訳がないのに。


それでも、その笑顔が私の胸に響くのだ。


だから、私は勇気を出すことにした。


こんなに頑張ってくれてる寺川くんに少しでも返したくなったから。


「寄りたいところあるの。ドーナツ屋さんのあと付き合ってくれる?」

そう言うととても柔らかく暖かな笑顔とともに


「もちろん。俺、一緒に行くって言っただろ?」

そう言ってくれたので、私も笑みを返して二人で自転車を押しながら歩き出した。
< 20 / 42 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop