残り100日の私と大好きな君

その日の夜

ヒソヒソと話す声で目が覚めた。

「…………奏汰くん、もう移植しか手はないんですってね…」

「隣の咲楽ちゃんも、かなり……もう…ねえ」

「二人ともまだ若いのに、可哀想に……」

そう話す看護師さんの声。

知ってた。

自分に残された時間がそこまで多くないということ。

でも、奏汰くんまでそんなに悪いとは思っていなかった。

奏汰くんが辛そうにしてるところは見たことがなかったから。

私、死んじゃうのかな……

死んじゃうんだよね…多分

優しくしてくれる奏汰くんだって、死んじゃうのかな……

それは…嫌だな…………

私は、他の人から好かれてないし、迷惑な存在だから、死んでも、喜ぶ人はいるだろうけど、悲しむ人はいない。

けど、奏汰くんは、あんなに優しくてかっこいいから、きっと友達も多くて、みんなから好かれて、死んだらみんな悲しむんだろうな。

"……残り、3ヶ月程度です。"

お医者さんの声が蘇る。

こんな辛い治療しても治らないなら、しなくていいのに……

でも、お母さんは、私に家にいて欲しくないから…

私はお母さんにいっぱい迷惑をかけている。

小さい時から病気で、たくさん、迷惑かけて…

学校でも、良い成績も取れなくて…

だから、お母さんはこんな私じゃなくて、妹を可愛がるんだ。

体が強くて、頭も良くて、ピアノもバレエもいっつもコンクールで賞を取ってる。

……私は劣等生だから…

はぁ…………嫌だな。

嫌だな。

涙……出ちゃうな…
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