残り100日の私と大好きな君
未来











また、懐かしい夢を見ていた。

毎年、この日になると必ずこの夢を見る。

「奏汰ー?そろそろ起きなさい!遅刻するよー?」

「はーい、今行く」





君が天国へ旅立ってから、7回目の春が来たよ。

偶然か必然か、今日は君が亡くなった日、そして、僕の大学の卒業式だ。

今年は、桜がいつもよりも早く咲いて、もう満開だよ。

今日は、僕にとって少し特別な日なんだ。




いつか、君は言ってたよね「もしも、私が生きれたら、私は他の誰かを助けてあげる仕事に就きたい」って。

君の代わり……では、ないけど、君のような………………咲楽ちゃんのような子を助けたくて、もう、大切な人の死で悲しむ人の顔を見たくなくて、一年浪人したけど、医学部に入ったよ。

そして、今日、卒業する。

夢に一歩近付く日なんだ。

卒業式終わったら、お墓、行くから待っててね。

いっぱい、話聞かせてあげたいんだ。

じゃあ、もうそろそろ行かなきゃ。








「行ってきます」





僕は、空に向かって手を合わせた。

それから、窓辺においた巻貝をそっと手に取り、耳に当てた。

貝の中では、あの日と変わらず、海が静かに波打っていた。
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