誓いのキスを何度でも
深まる秋。
その後の誠一の行動は素早かった。

誠太郎の夏休みが終わる前、
誠一は誠太郎の学区が変わらない近所の3LDKのマンションを借りたと言って
私達を招待した。

たぶん、とっくに借りてあったのだろう。
タイミングが良すぎるし…

綺麗なファミリータイプのマンションの12階の角部屋。
もちろん、オートロックでエレベーターだって付いている。

誠太郎が走って部屋に入ってあちこち覗いて歩く。
何も置かれていない。入居前の部屋だ。

LDは15畳。そのままうちの部屋ががすっぽり入る大きさ。
隣には和室があって、リビングと繋げて使える。
キッチンは対面式で贅沢な仕様。
コンロはIHで大型の食洗機も作り付け。収納もたっぷりだ。

誠一は楽しそうに誠太郎をリビングの隣のフローリングの日当たりが良い6畳くらいの部屋に連れて行き、

「ここは誠太郎の部屋にするといいかな」と微笑みかける。

「僕の部屋なの?」

「玄関に近い離れた広い部屋は書斎と寝室を兼ねた部屋にするつもりなんだ。
こっちの方が明るいよ。ここじゃ嫌?」

と誠一が聞くと、誠太郎は口も効けずに目を輝かせて作り付けのクローゼットを開け閉めし、
窓の外を覗いたりしている。

誠一は誠太郎の前に膝をつき、

「誠太郎と果歩の家族になりたい。
俺がお父さんじゃダメかな?」と誠太郎の手を包んで顔を見つめた。

「…サクちゃんが僕のお父さんになるの?」
と誠太郎は誠一の顔をじっと見ている。

きっと大切な話だとわかっているんだろう。

「誠太郎の父親になって一緒に暮らしたい。
果歩と結婚してずっと一緒にいたい」

「僕は…サクちゃんがお父さんでもいいよ。
サッカーもゲームも上手いし、
…果歩が好きなんでしょ」

「果歩も誠太郎も大好きだよ。
ふたりは俺にとって特別なんだ。
一緒にいてくれるだけで、元気が出る」

と誠一は誠太郎ににっこり微笑みかけ、ぎゅっと抱きしめると、

「僕もサクちゃんが好きだよ」と誠太郎も誠一にギュッと抱きついた。





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